数年前、ロシアで氷河期時代の凍結した種が見つかり、育ててみると種が発芽。
そして花を咲かせ、また新たな種を実らせたという事例があるのを知っていますか?
普段気にも留めない植物の種ですが、そこには私たちの想像を超える神秘の世界が隠されています。
そして生き残るための恐るべき戦略も・・・
Contents
恐るべき種の生存戦略
スイカの種は砂漠から脱出するために進化した
カボチャやメロンなど他の植物は果実の真ん中に種があるのに対し、スイカの種は全体にバラバラに散らばっています。
その理由は、スイカの原産地であるアフリカ中部の砂漠地帯の環境が影響しています。
砂漠では植物や生き物はほとんど存在せず、そのためスイカは数少ない動物に確実に種を運んでもらうように、種をバラバラに配置したのです。
種をバラバラに配置したことで、動物がスイカの実を食べようとすると、どうしても種も飲み込んでしまいます。
さらに、スイカの種は硬いガラス質に覆われているため胃や腸で消化しにくく、排出に時間がかかります。
これは少しでも遠くに運んでもらうためのスイカの戦略なのです。
ちなみにスイカは真ん中に行けば行くほど甘くなっていきますが、これは動物に全ての種を食べてもらうためでもあるのです。
雑草が何度も生えてくるのはシードバンクが原因
抜いても抜いても生えてくる雑草。実は雑草は、土の中に「シードバンク(種の集団)」と呼ばれるものを作っています。
雑草が抜かれるとその穴に日光が差し込み、すると土の中にあったシードバンクが目覚め、新たに雑草が生えてくるという仕組みになっています。
そのため抜いても抜いても雑草はなくならないのです。
ヒマワリの種は、実は種ではない?
ヒマワリの種と言えば、模様が白黒のシマシマになっていますね。
ですが、実はこの白黒の部分は「殻」であり、本当の種は殻の中にあります。
ヒマワリの種がシマシマなのは、目立たせてネズミに見つけてもらうためなのです。
ヒマワリの種が大好物のネズミは、冬に備えて種(餌)を地面に埋めるという性質があります。
ですが、全てを食べつくすことなく埋めたことをうっかり忘れてしまうこともあるのだとか。
ネズミがうっかり忘れてしまった種が発芽することでヒマワリは生殖範囲を広げていたのです。
さらに、ヒマワリの種のぎっしりと詰まった並び方は、数学の「フィボナッチ数(列)」に基づいた効率的な並び方であり、これにより生存率を上げているのです。
コーヒー豆が苦いのは鳥に食べさせるため
コーヒーの元となるコーヒ豆ですがこれは「コーヒーノキ」の種。
実はコーヒーの種も動物に食べられる事で生存範囲を広げています。
ですが、ほ乳類などの動物は種を噛み砕いてしまうため、種を丸呑みする鳥だけに食べさせるために身に着けたのが毒性物質の「カフェイン」なのです。
ほ乳類はカフェインを嫌うためコーヒーノキを避けます。
それに対し鳥類はカフェインなどの毒性物質を感じないため鳥だけがコーヒーノキの種を別の場所へ運んでくれるのです。
ちなみに、コーヒーノキの実が赤いのも鳥が最も認識しやすい色だからなのです。
落花生のからは大雨で漂流しやすい構造になっている
豆の仲間「落花生」。他のマメ科の植物は地上に実がなりますが、落花生は土の中で育ちます。
それは、豪雨の瞬間を待っているからなのです。落花生の原産地であるアンデス山脈付近は乾燥地帯。
そこには時々豪雨が降り、濁流となって土壌が流れてしまいます。
土の中の落花生は濁流に乗り、生存範囲を広げているのです。
そのため落花生の殻は水に浮かんで流れやすい形になっているのです。
ユーカリは山火事を引き起こす事で種を残す
コアラの大好物でよく知られる「ユーカリ」ですが、実は生存範囲を広げるために恐ろしい戦略があるのです。
ユーカリの葉は自ら引火性物質(テルペン)を放出し、山火事を引き起こしやすくしています。
この山火事により、他の植物を焼き尽すことが目的なのです。
一方、ユーカリの種は火事の高熱や煙により、発芽します。
その結果、山火事終了後と同時に発芽し、他の植物に邪魔されることなく地上を独占できるのです。
キウイフルーツは舌の表面を溶かす
私たちがよく食べる「キウイフルーツ」。
甘い香りでサルをおびきよせ、食べてもらうことで生存範囲を広げています。
しかし、1匹の同じサルにだけ食べられたのでは行動範囲は同じになってしまい、広範囲で繁殖することができません。
できるだけ多くのサルに食べてもらうために、キウイがとった戦略は…サルの舌を溶かすことだったのです。
キウイフルーツにはタンパク質分解酵素が含まれているため、食べすぎると舌の表面が溶けてしまいます。
そのため一度にあまり多くは食べられないようになっているのです。
スミレの種はアリに利用されるために進化した
街中のコンクリートによく生えている「スミレ」ですが、スミレの種にはエライオソームというゼリー状の物質が周りについています。
この物質は脂肪やアミノ酸などの栄養分を多く含んでいるため、それをエサとするアリが巣穴に持ち帰るのですが、アリの巣穴は深く暗い場所にあるためスミレの種は発芽することができません。
しかし、エライオソームを食べ終わったアリはゴミになった種を巣の外へ捨てます。そこでスミレの種はアリの巣穴から脱出し、発芽するのです。
アリの巣は街中のアスファルトの隙間などによく作られるため、スミレはコンクリートの割れ目などによく咲いているのです。
ランの種はバクテリアを養分にする
独特な花の形から観賞用として愛されている「ラン」。
ひとつの花から数十万個の種を作りますが、1粒1mm以下であるため発芽する養分を持っておらず、自ら発芽することができません。
そのため、ランの種は自分の体に菌を寄生させ、菌の栄養分を奪い取り、発芽するためのエネルギーにする方法で発芽します。
カジュマルの種は木を乗っ取る
熱帯地域に生息する「ガジュマル」。成長すると20m以上の大木に成長しますが、種は数mm程度の大きさしかありません。
ライバルが多く生息するジャングルでガジュマルは鳥に種を食べさせ、種が入ったフンを他の木の枝にさせる方法を選んだのです。
そして木の枝で発芽するとゆっくりと細い根を伸ばしていき、最後にはその木を覆いつくし、枯らしてしまいます。
そして最終的にはその木を乗っ取ってしまうのです。
この戦略により、カジュマルは生存範囲を広げています。
元ネタは種?現代のテクノロジー
空を飛ぶ種がもとになってステルス爆撃機が作られた
東南アジアやオーストラリアなど熱帯雨林に生息する「アルソミトラ」。
アルソミトラの種はひらひらと風に乗って100m以上遠くへ飛ぶのが特徴。また、アルソミトラが生息する熱帯雨林では風があまり吹かないため、種を広い範囲にバラまくには種自身で飛ぶ必要があるのです。
この種は、最小限の風で遠くまで飛ぶ形になっています。
そしてアルソミトラの種のデザインをもとに作られたのが「ステルス爆撃機」なのです。
ステルス爆撃機は、風の抵抗が最小限に抑えられていて、飛行効率が極めて高く無給油で15000km以上も飛ぶことができるため、今では世界の戦闘機の主流となっています。
さらに、ステルス爆撃機はアルソミトラの種のように垂直の突起物がないため防空システムに探知されにくいのです。
ナナカマドの種から防虫剤が生まれた
バラ科の植物「ナナカマド」ですが、日本でも街路樹としてよく植えられています。
実はナナカマドには腐らないという他の植物にない特徴があります。
ナナカマドの実は熟しても、地面に落ちても1年以上も腐りません。
その理由はナナカマドにはソルビン酸が含まれているからなのです。
ソルビン酸にはカビや細菌の働きを抑える効果があります。
そしてソルビン酸の特徴を応用して作られたのがウィンナーやかまぼこなどの「食品保存料」なのです。
松ぼっくりの種から高機能のスポーツウェアが作られた
公園などによく落ちている「松ぼっくり」ですが、種はりん片と呼ばれる場所に隠されていて、風に飛ばすことで種をバラまいています。
しかし、りん片を開いて種を飛ばすのは、遠くに飛ばせる湿気のない時のみ。
種が飛びにくい湿気の多い日にはりん片を閉じ、湿気がなくなるのを待っているのです。
松ぼっくりのりん片は2種類の繊維からなり、空気が乾燥すると外側の繊維が縮み、内側のりん片を引っ張るようにできています。
これをヒントに作られたのが「スマートファブリック」。
2種類の異なる繊維から作られた生地で、人の汗に触れると繊維が開き、乾燥すると自動的に閉じるようになっているためこの繊維から作られた衣服は自動的に温度調節してくれるのです。
この繊維はスイスの会社によって特許化されたため、アウトドアウェアやスポーツウェアなど幅広く使用されています。
この技術が進化すれば、将来、たった1枚の服だけですべての季節を過ごせるようになるかもしれませんね。
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