インフルエンザといえば「タミフル」という治療薬が有名ですが、2018年3月にシオノギ製薬の「ゾフルーザ」という画期的な薬が発売されました。
1回服用するだけでいい・他の人にウイルス感染させる危険性をさげる効果がある新薬だそうです。
1剤で年間売上1000億円超の新薬は「ブロックバスター」と呼ばれ、世界中の製薬企業がその開発を目指しています。
画期的な新薬の開発に成功すれば製薬会社には巨大な利益が入ってきますが、その開発は並大抵のものではなく1つの新薬が世に出るまで10年以上かかり、費用は1000億円以上と莫大な開発費がかかってしまいます。
今回はそんな新薬の研究開発の舞台裏についておまとめしました。
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土を集めて新薬開発をする
画期的な新薬は人間の力だけではできません。
自然界に宿る秘められた力が必要になってきます。
そのため、植物・土・海洋生物からまだ見ぬ新たな物質を摂取することが新たな一歩となるのです。
中でも土には、多くの微生物や菌が生息し、1グラムの土に100万種類の微生物がいると言われています。
実際、アステラス製薬が開発した「プログラフ」という臓器移植の際に起きる拒絶反応を抑える薬は茨城県の筑波山の土壌の中の菌から作られています。
コンピューターを使って化合物の合成を行っている
製薬会社によっては日本だけでなく、東南アジアの諸外国と協定を結び、微生物などの探索・採取を行っています。
そこで見つかった微生物から新薬が生まれ、特許などが発生した場合その利益の一部を当諸国へ還元されます。
採取した土などから微生物や菌を抽出し、化合物を加えたりして新たな薬の候補を作り出すのが「基礎研究」。
こうしてできた化合物はその時に使えなくても保存されます。
製薬会社では常に100万種類を超える化合物をストックしているそうです。
新薬の候補となる物質は膨大な数あるため、手作業ではなくコンピューターを使って化合物を合成する事が多いのだとか。
1つの病気に対し、数百から数千もの化合物が合成されますが、新薬として世に出るのは3万分の1の確立だと言われています。
動物の慰霊祭を行うのが恒例になっている
有力な新薬の候補物質が見つかると有効性・安全性・毒性を動物で実験を行います。
これを「非臨床試験」といいます。
多くの製薬会社は動物実験専用の施設を完備しており、規模も大きいのだそう。
使われる動物はマウスやウサギなどの小型のほ乳類からはじまり中型犬、大型犬など徐々に大きくなっていきます。
実験の際、亡くなってしまう動物もいるため年に1度、動物の慰霊祭を行うのが恒例となっています。
実際に人間で実験を行っている
薬の最終的な試験は「臨床試験」を行います。
これは、実際に人間で薬の安全性と有効性を確認する作業で、この作業は3段階に分かれています。
- 1つ目 健康な人に対して薬を投与
- 2つ目 少人数の患者さんに対して薬を投与
- 3つ目 多数の患者さんに対して薬を投与
3つ目の段階では「二重盲検」と呼ばれる特殊な試験も行われます。
これは、本物の薬とまったく同じ見た目で効果のない薬を患者さんに飲ませます。
「効いたような気がする」というプラセボ効果を防ぐために行っているそうです。
ちなみに、患者だけでなく医師も偽物であることを知りません。
この最終段階の試験まで来ても、薬として見込みがないと判断されれば、試験は容赦なく中止。お金も時間もムダになってしまいます。
膨大にある臨床試験のデータを厚生労働省に提出し承認されれば薬が完成します。
しかし、承認には1年以上の時間がかかってしまうのだそうです。
研究開発はスピードが命!
どんなに素晴らしい薬を作っても、他社に1分でも先に特許を出されてしまえば全て水の泡。
そのため、製薬会社の研究開発はスピードが命なのだそうです。
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